概要
- 2024年夏、NeurIPS、WACV、TerraBytesで22本の論文査読を実施
- 約68%がAI生成や虚偽引用・著者捏造などの問題を含む
- LLMによる論文・査読の質低下と検出困難化が深刻化
- 査読者・著者双方の作業効率やモチベーション低下
- LLM活用の是非と、正しい使い方の重要性を議論
AI論文査読現場の現状と課題
- 2024年夏、 NeurIPS、 WACV、 TerraBytes で計22本の論文査読を担当
- そのうち 15本(68%) が「完全な虚偽引用」「既存論文への著者捏造」「明らかなLLM生成文」等の問題を含む
- 査読現場ではこのようなAI生成物を「slop trenches」と呼称
- 時間の無駄・モチベーション低下の原因
- LLMによる科学論文・査読の現状に関する文献調査を実施
- 独自開発の bib-audit ツールを公開し、引用監査の効率化を図る
査読割り当て別の問題論文割合
- NeurIPS(Datasets and Benchmarks):5本中2本
- NeurIPS(Position Paper):2本中2本
- TerraBytes(ECCV workshop):計7本中5本
- WACV:8本中6本
- 合計:Caleb 11本中6本(55%)、Isaac 11本中9本(82%)
業界全体の状況
- Nature 分析:2025年に「おそらく」無効なAI引用を含む論文が数万本規模
- Zhao et al. :2025年だけで約146,900件の幻覚引用を arXiv等で検出
- 査読段階で検出されず、出版まで残るケースが85.3%
- Lancet 調査:2023年は2,828本に1本、2025年は458本に1本、2026年初頭は277本に1本が捏造引用
- Ansari :NeurIPS 2025採択論文の1%が幻覚引用を含む
- 査読側にもAI利用が拡大し、ICLR 2026では21%の査読が完全AI生成
- ICML 2026では「LLM利用禁止」ポリシー下でも1%がLLM利用を検出
LLM査読の脆弱性
- Li et al. :敵対的に書き換えた要約でAI査読の評価を38%の確率で向上
- Gemini 3 Flash査読者で+1.31、GPT 5.4 Miniで+0.88ポイントの評価増加
査読者の体験と苦悩
- 査読は 無償労働 であり、AI生成物への対応は時間の浪費
- 虚偽引用や捏造著者が明らかになった時点で強いフラストレーション
- 「著者が自分の論文や引用を読んでいないなら、なぜ我々が読む必要があるのか」という疑問
- 査読の質や意義が揺らぐ状況
個別体験
- Caleb:11本中5本が幻覚著者・論文、53ページにわたる幻覚用語満載論文も
- Isaac:11本中9本が問題あり、知人著者の論文に偽名著者を割り当てた事例も
どちらが悪質か?(幻覚著者 vs 完全な幻覚引用)
- 両者とも「著者が引用元を確認していない」証拠であり、論文全体の信頼性を損なう
- 査読者としては、どちらも受け入れがたい
LLM生成文の見抜き方
- Calebの「LLM生成文」判別ポイント
- 「It’s not X, it’s Y」など典型的なLLMフレーズ
- 不自然に複雑な文
- 結果を過度に誇張する表現
- Isaacのポイント
- 本文と表・データの数値不一致
- 数値や詳細を過剰に本文に盛り込む傾向
- 議論パートで表の内容をそのまま繰り返す
査読ワークフローの変化
- Caleb:要旨後すぐに参考文献リストをチェック、bib-audit活用
- Isaac:LLM痕跡の検出作業が増加、ほとんどの論文を「悪意ある投稿」とみなす傾向
- 有意義な人間執筆論文の割合が減少
査読時間の使い道と持続可能性
- Caleb:明らかなLLM生成でなければ科学的内容の評価に集中
- Isaac:論文が面白いか、完全なB.S.かを優先的に判断
- 査読義務の増加により、負担感・徒労感の増大
LLM活用の是非と著者の責任
- Caleb・Isaacともに日常的にClaude等LLMを活用
- 重要なのは 「出力を鵜呑みにせず、必ず自分で検証・編集すること」
- 参考文献は bib-audit やGoogle Scholar等で一件ずつ手動確認
- Zotero 等の管理ツールで信頼できる引用リストを構築
- 他者からの早期フィードバックや、ドラフト段階での大幅改稿も重要
結論
- LLMの活用自体は否定せず、 正しい使い方と責任ある運用 が不可欠
- 幻覚引用やAI生成文を含む論文は 即時desk reject が妥当
- 科学的コミュニケーションの質維持には、著者・査読者双方の意識改革とツール活用が必須