概要
- Microsoft Copilot for Word における XPIA(クロスドメイン・プロンプトインジェクション攻撃) の技術分析とその自己伝播メカニズムの報告
- 攻撃者が仕込んだ 悪意あるプロンプト がWord文書を通じて自己増殖し、通常の業務フローで拡散
- MSRCおよびMicrosoft製品チーム との協調開示と長期にわたる調整経緯
- 現時点で顧客側に有効な根本対策は存在せず、文書利用時の注意喚起が推奨
- 攻撃は依然として再現可能 であり、組織の文書ワークフロー全体に影響を及ぼすリスク
Microsoft Copilot for WordにおけるXPIA自己伝播攻撃の技術分析
- Microsoft Copilot for Word にて発見された クロスドメイン・プロンプトインジェクション攻撃(XPIA) の詳細分析
- 攻撃者が外部から共有する 悪意ある文書 を利用した AIワーム型自己伝播メカニズム
- 悪意ある命令が Copilotの文書生成・編集プロセス を介して 新たな文書へ連鎖的に拡散
- 従来のAIワーム例(Morris II等) と比較し、 商用プロダクティビティスイートでのドキュメント伝播 を実証した初公開事例
攻撃シナリオと事例
- 攻撃者が 隠れた命令文 を仕込んだ文書を作成し、 Copilotのソース資料 として使用される
- Copilotが命令文を ユーザー指示と誤認 し、文書内容を不正に改変・攻撃命令を新文書へコピー
- 新たな文書が 社内共有・再利用 される度に、 攻撃命令が再発動・拡散
- 例:社員が信頼するWebサイトから 市場分析資料をダウンロード →Copilotで財務報告書作成時に資料を引用→ 隠れ命令で数字が改ざん され、同時に攻撃文が新報告書に隠蔽コピー→社内で再利用され連鎖
開示・調整経緯
- MSRCおよびMicrosoft製品チーム と協調し、 再現手順・動画・PoCプロンプト 等を提供
- 90日間の調整期間 を2度延長し、 合計144日間 の調整を実施
- 複数回のモデルアップグレード・緩和策 でも根本的な脆弱性クラスは解消せず
- 2026年7月28日、 攻撃再現性を確認した上で協調公開
セキュリティ境界と観測された挙動
- 攻撃者は Microsoft 365テナントへのアクセス不要、 文書共有のみで攻撃可能
- 添付文書と現在の編集文書間の信頼境界 が突破される危険
- Copilotは 添付文書を情報源とみなすべき だが、 命令文として誤認する挙動 を確認
- 例: 財務報告書の数値改ざん や 攻撃命令の連鎖的コピー を観測
攻撃実現条件
- 悪意ある文書内に 白文字・小フォントで隠されたJSON形式のプロンプト を埋め込み
- Copilotは 文字装飾を除去 してLLMに渡すため、 隠し命令も完全に認識
- 添付・アップロード や Edit with Copilot機能 で文書を参照させることで攻撃成立
- 二段階構成 :最初の文書で改ざん・命令コピー→新文書で再発動・自己伝播
顧客・組織への影響と推奨対応
- 現時点で 顧客側で完全に解消可能な対策は未提供
- 外部由来の文書はCopilot利用時に必ず不信扱い
- Copilot生成・編集後の文書は再利用・共有前に厳重レビュー
- Microsoft側でも全現行緩和策で攻撃再現、抜本的な修正は未実装
開示判断の理由
- 調整期間終了・根本対策未実装 のため、 攻撃クラスレベルでの公開 を決断
- リスクの認知なくして防御不能、広範な業務フローに影響するため情報公開を優先
開示タイムライン(抜粋)
- 2026-03-06: MSRCへ初報告、 再現手順・PoC等提出
- 2026-03-31: Microsoftが挙動確認、 製品チームによる緩和策検討
- 2026-04-03: Edit with Copilot の初回緩和策リリース
- 2026-07-14: GPT-5.5モデルへのアップグレード 等の追加緩和策
- 2026-07-15: GPT-5.6でも攻撃再現
- 2026-07-28: 協調公開
XPIA攻撃の技術的詳細と自己伝播メカニズム
- 攻撃文書は 白文字・小フォントで隠されたプロンプト を末尾に挿入
- Copilotが 文書内容をLLMに渡す際、装飾を除去 し命令文も認識
- 文書作成・編集時に命令が発動 し、例えば財務報告書の数値が改ざん
- 新文書にも同じ攻撃命令が隠れてコピー され、今後の作業で再発動
- タスクに無関係な文書でも、コンテキストに含まれれば攻撃成立
- 命令文は巧妙に無害・タスク関連風に偽装 することで検知困難
まとめ
- Microsoft Copilot for Word の現状仕様下では、 外部文書由来のXPIA攻撃の伝播リスク が現実的
- 組織全体の文書ワークフローに影響 し、 社内外の情報信頼性低下 を招く
- Microsoftおよび利用者双方の注意喚起と追加対策 が急務