概要
- 本記事は 線形アテンション の発展系「DeltaNet」ファミリーの数式と直感的理解を解説
- ブラケット記法 (bra-ket notation)を用いて数式の形を明確化
- DeltaNet、Gated DeltaNet、Kimi Delta Attention(KDA)の 導出手順 を段階的に説明
- Softmaxアテンション から線形アテンション、DeltaNetへの流れを整理
- 最新モデルQwenやKimiで使われる 実装的要点 も言及
線形アテンションとDeltaNetファミリーの数式直感
- 本記事は bra-ket記法 (∣q⟩, ⟨k∣, ∣v⟩⟨k∣など)を使い、数式の 形状や意味 を視覚的に捉えやすくしている
- ∣q⟩は 列ベクトル、⟨k∣は 行ベクトル、⟨k∣q⟩は スカラー、∣v⟩⟨k∣は 行列 を表現
- キー(key)は 左向き、クエリ・バリューは 右向き で記述
- 本記事の前提: 1つの因果的アテンションヘッド、 実数ベクトル、 正規化済みキー、 状態はkey空間からvalue空間への写像
ソフトマックスアテンションから線形アテンションへ
- 通常の因果的ソフトマックスアテンション(クエリtに対して)
- アテンション重み
- ati=exp(s⟨ki∣qt⟩)/∑j≤t exp(s⟨kj∣qt⟩), s=dk^(-1/2)
- 出力
- ∣ot⟩=∑i≤t ati∣vi⟩
- アテンション重み
- ソフトマックスの 分母 がクエリと全キーに依存するため計算が非線形・非局所的
- ソフトマックスを 除去 し、スケーリングもクエリに内包
- ∣ot⟩=∑i≤t ⟨ki∣qt⟩∣vi⟩
- これは 線形アテンション の基本形
線形アテンションの状態表現
- 過去の情報を 固定サイズの状態行列St に集約
- St=∑i≤t ∣vi⟩⟨ki∣
- 更新: St=St−1+∣vt⟩⟨kt∣
- 読み出し: ∣ot⟩=St∣qt⟩
- これにより メモリ消費が線形 になり、計算効率が大幅向上
線形アテンションの課題
- 加算的更新 (+=)のため、同じキーで複数回書き込むと値が 累積 されてしまう
- 各キーが 直交していない 場合、過去の情報が 干渉 しやすい
- 本来は 上書き (=)的な振る舞いが望ましい
DeltaNet:エラーのみを書き込む発想
- DeltaNetは 差分(デルタ) のみを書き込むことで加算的問題を解消
- 書き込み前に「現在このキーにどんな値が紐付いているか」を確認
- ∣v^t⟩=St−1∣kt⟩
- 目標値∣vt⟩との差分のみを エラー として書き込む
- ∣et⟩=βt(∣vt⟩−∣v^t⟩)
- βtは 学習済みの書き込み強度 (0~1)
- 更新式
- St=St−1+∣et⟩⟨kt∣
- これにより、同じキーでの上書きが 加重平均 的に行われる
- エラーは ローカル (該当キー方向のみ)に適用され、 直交方向には影響しない
オンライン学習的導出
- 線形写像Sに対する 再構成損失 を最小化する勾配降下
- Lt(S)=1/2∥S∣kt⟩−∣vt⟩∥²
- 勾配は(S∣kt⟩−∣vt⟩)⟨kt∣
- βtだけ勾配降下すると、上記と同じ更新式に
DeltaNetの状態遷移の特徴
- St=St−1(I−βt∣kt⟩⟨kt∣)+βt∣vt⟩⟨kt∣
- 単位長キーの場合、現在キー方向は1−βt倍、直交方向はそのまま
- 古い関連情報を消して新しい値を追加 する構造
Gated DeltaNet:グローバルな忘却
- DeltaNetは 個別キー方向の修正 だが、 全体的な忘却 はできない
- 保持率αt (0~1)を導入し、状態全体をスケーリング
- S~t=αtSt−1
- その後、DeltaNet同様にエラーを書き込む
- ∣v^t⟩=S~t∣kt⟩
- ∣et⟩=βt(∣vt⟩−∣v^t⟩)
- St=S~t+∣et⟩⟨kt∣
- 忘却→予測→修正→書き込み の順
- αtは 全状態に対するグローバルな忘却ゲート
Kimi Delta Attention(KDA):チャネルごとの忘却
- Gated DeltaNetの αtをスカラー→ベクトル (チャネルごと)に拡張
- αt∈[0,1]^dkを 対角行列Dt=Diag(αt) として適用
- S~t=St−1Dt
- 以降はDeltaNet同様
- ∣v^t⟩=S~t∣kt⟩
- ∣et⟩=βt(∣vt⟩−∣v^t⟩)
- St=S~t+∣et⟩⟨kt∣
- 各keyチャネルごとに独立した保持率 を持つことで、より柔軟な情報管理が可能
まとめ:DeltaNetファミリーの進化と直感
- 線形アテンション は効率的だが、 加算的更新 による情報干渉が課題
- DeltaNet は「エラーのみ書き込む」ことで 上書き性 と 安定性 を両立
- Gated DeltaNet は 全体忘却ゲート を導入し、情報の新陳代謝を促進
- Kimi Delta Attention は チャネルごと に忘却率を制御し、さらに細やかな記憶管理を実現
- 最新のQwenやKimiモデルで採用される 実用的な線形アテンション設計指針