概要
- サウジアラビアのAlghat砂漠で海の貝殻に酷似した岩石化石を発見
- 形態(モルフォロジー)解析による貝殻同定への挑戦
- PCA(主成分分析)で貝殻形状の特徴抽出と可視化
- Alghat化石と最も類似する現生種はSphincterochila candidissima
- 形状のみの比較が系統推定に限界を示すが、収斂進化の可能性も示唆
Alghat砂漠で発見された「貝殻に似た岩石」化石の謎
- サウジアラビアの Alghat砂漠、崖のふもとで 完全に岩石化した貝殻状の化石 を発見
- 最寄りの海岸(Dammam)から 500km以上 離れているため、存在自体が不思議
- 周辺には 石灰岩・海洋化石・堆積構造 が多数存在し、 ジュラ紀後期(約1億5千万年前) には海に覆われていた証拠
- Najd周辺の地層分布図も 古海洋環境 を裏付け
化石の動物種を形態のみで推定する試み
- 専門的な分析(堆積物や詳細形状の調査)は 古生物学者 が行うべきだが、今回は DIYで形態(モルフォロジー)解析 に挑戦
- 形態だけでの判別は 系統推定には不十分 だが、直感的で面白い方法として実施
貝殻形状の数理表現と比較手法
- Zhangらの貝殻画像データセット (7894種・59244画像)を利用
- 形状比較には 正規化処理 が不可欠
- 写真の中心に貝殻を配置
- 最大半径を1にスケール統一
- 開口部がカメラ正面を向く画像のみ選択(ピッチ・ヨー補正)
- 最長半径を右側に揃えロール補正
- 貝殻輪郭を 256点 で抽出し、各点を(x, y)座標で表現(256×2行列)
距離計算と次元削減
- 2つの貝殻間の距離は 対応する輪郭点のユークリッド距離の2乗和
- 256次元の形状空間は 冗長性が高く、PCA(主成分分析)で低次元化
- PC1 で56.5%、 PC2 までで67.25%の分散を説明
- 2つの主成分だけで大まかな形状特徴を記述可能
主成分の意味と形状空間の可視化
- PC1 は「尖り度」、 PC2 は「対称性や質量分布」を表現
- PC1負値(丸い貝)は多いが多様性は低く、PC1正値(尖った貝)は粗い形状が多い
- 丸いが非対称な貝はデータセットに存在せず
Alghat化石の位置と類似種
- PCA空間上で Alghat化石 に最も近い現生種は Sphincterochila candidissima
- ただしこの種の最古化石は 3800万年前 で、ジュラ紀には存在しない
- 形状の類似は 収斂進化 の可能性を示唆
まとめとツール紹介
- 形状のみの比較は 系統推定には限界 があるが、環境圧による 収斂進化 を考察する上で興味深い
- 貝殻形状空間を可視化できる Webツール も公開中
参考文献
- Aba Alkhayl, S. S. (2022). Marine macro-invertebrate fossils from the Lower Hanifa Formation (Hawtah Member), central Saudi Arabia. Arabian Journal of Geosciences, 15, 1410. https://doi.org/10.1007/s12517-022-10581-w
- Zhang, Q., Zhou, J., He, J. et al. A shell dataset, for shell features extraction and recognition. Sci Data 6, 226 (2019). https://doi.org/10.1038/s41597-019-0230-3
- https://en.wikipedia.org/wiki/Sphincterochila_candidissima
- Tracey, S., Todd, J. A., & Erwin, D. H. (1993). Mollusca: Gastropoda. In M. J. Benton (Ed.), The Fossil Record 2 (pp. 131–167). London: Chapman & Hall