概要
- HPによるPalmの買収の舞台裏と失敗の経緯
- CTOとしての技術的裏付けと買収推進の理由
- 経営層の交代による戦略の崩壊
- 個人的な苦悩と責任転嫁の体験
- イノベーション意思決定における教訓
HPによるPalm買収とWebOSの可能性
- 2010年初頭、HPはモバイルプラットフォームの獲得を急務と認識
- PC市場の衰退 と スマートフォン・タブレットの台頭 への危機感
- Palmは財政難だったが、 WebOSという革新的技術 を保有
- 真のマルチタスク、洗練されたUI、優れた技術アーキテクチャ
- CTOとして 技術的デューデリジェンス を主導
- Palmエンジニアと密接に協働、コードやチーム力を徹底評価
- WebOSは単なるOSではなく、 次世代プラットフォーム と確信
- Mark HurdとHP取締役会 に買収を提案し、 1.2億ドルで買収決定
買収後の統合計画と戦略
- 買収完了後、 HPのグローバル資源 を活かした拡大戦略を策定
- スマホだけでなく、 タブレットやPC、プリンターへの展開 も視野
- Palmリーダー陣と連携し、 統合計画とシナジー創出 を推進
- 全てが順調に進むように見えたが、 経営層の交代 が発生
経営層交代による戦略の崩壊
- 2010年8月、Mark Hurdが辞任し、 Leo Apotheker (元SAP CEO)が就任
- Apothekerは HPをハードウェアからソフトウェア企業へ転換 する戦略を志向
- PC、プリンター、モバイル端末の縮小・撤退を推進
- WebOSは「ハードウェアの足かせ」とみなされる
- 戦略の一貫性が崩壊 し、買収の意義が失われる
個人的な苦悩と責任転嫁の体験
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統合作業の最中に 緊急手術が必要となり、8週間の自宅療養
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その間に HPのモバイル戦略が急速に崩壊
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2011年7月1日、WebOS搭載タブレット「TouchPad」発売
- iPadと同価格 で投入するも、アプリ不足・品質不足で不評
- 販売数25,000台 (出荷27万台)、AppleのiPadは同時期に900万台売上
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発売から49日後 の8月18日、 WebOSデバイスの即時販売中止 を発表
- Palmチームへの事前通達なし
- 経営層の独断的判断、現場の意見無視
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復帰初日、 HP Labsのカフェテリアで技術スタッフから非難
- 「もう二度と休むな」「CEOと取締役には大人の監督が必要」と糾弾
- 自分の不在=失敗の責任 とされ、精神的ダメージ
経営の本質的な問題と教訓
- Apothekerの経験不足 :SAP(年商150億ドル)出身で、HP(年商1,250億ドル)の規模・複雑性に不適合
- 消費者向けプラットフォーム技術の評価経験なし
- 取締役会も適切な質問や評価を行わず、戦略的ミスマッチを見抜けなかった
- 「大人の監督」=技術的・戦略的な目利きの不在 が根本問題
退職とその後の信念
- HP退職時、 沈黙を条件とした退職金を拒否
- 真実を語り、イノベーションの教訓を共有する信念
- HP株は一切売却せず、今も同社の将来性を信じる
- 現CEO Enrique Lores、HPE CEO Antonio Neri は、HP文化と技術を理解する真のリーダー
- 彼らならWebOSの価値を正しく評価したはず
- イノベーション意思決定の教訓 :「知性や善意」ではなく、「体系的な思考フレームワーク」が決定の質を左右
- 誤った問題設定 や、 短期的視点・プレッシャー下での判断ミス が1.2億ドルのイノベーション価値を消滅
イノベーション意思決定における体系的思考の重要性
- Leo Apotheker や取締役会は無能ではなく、「誤った思考フレームワーク」による判断ミス
- 正しい問題設定 と 長期視点での評価 の必要性
- イノベーション失敗の本質 は、個人の能力や意図ではなく、「組織的な意思決定プロセス」に潜む
この物語は、技術革新の現場で起きた組織的失敗と、その背後にある人間ドラマ、そして「体系的思考」の重要性を伝える教訓である。