概要
- Stanford Medicine主導の研究で、 老化関連タンパク質15-PGDH を阻害する注射が高齢マウスの 膝軟骨再生 を実現
- 同治療は ACL損傷後の関節炎予防 にも効果を示し、 人間の軟骨サンプル でも再生反応を確認
- 経口薬の臨床試験 も進行中で、将来的には 関節置換手術の回避 が期待
- 根本治療 としての新アプローチで、既存治療とは異なる
- 特許出願・企業連携 も進行中
Stanford Medicineの研究:老化と軟骨再生の新治療
- 15-PGDH阻害剤 の注射により、高齢マウスの 膝関節軟骨の自然な減少を逆転 させる効果を確認
- ACL損傷に類似した膝の怪我後の 関節炎発症も抑制
- 人間の膝関節置換術時の軟骨サンプル でも、同様の再生効果を観察
- 細胞外マトリックス と 軟骨産生細胞(Chondrocyte) の両方で新しい機能的軟骨が形成
- 経口薬(ピル)や局所注射 による治療の将来性
- 成功すれば、 膝・股関節置換手術の減少 や不要化も視野
変形性関節症(OA)への直接的アプローチ
- 変形性関節症(Osteoarthritis) は米国成人の約5人に1人が罹患、年間医療費は 約650億ドル
- 現在の治療は 痛み管理や外科的置換 が中心
- 軟骨損傷を遅延・逆転させる薬剤は未承認
- 今回の新アプローチは 疾患の根本原因への直接攻撃 を目指す
老化酵素「15-PGDH」とその役割
- 15-PGDH は 老化とともに増加するタンパク質(Gerozyme)
- 2023年に同研究チームがGerozymeを発見、 組織機能低下の要因 と判明
- 15-PGDH阻害剤 で高齢マウスの筋肉量・持久力が増加
- 若いマウスで 15-PGDH過剰発現 させると筋肉が萎縮・弱体化
- 骨・神経・血液細胞の再生にも関与
- 軟骨では 幹細胞を介さず、Chondrocyteの遺伝子発現が若返る 特徴
新たな組織再生の道
- 幹細胞非依存型の組織再生 という新しいメカニズム
- Helen Blau教授 (微生物学・免疫学)、 Nidhi Bhutani准教授 (整形外科)が主導
- 研究成果は Science誌 に掲載
- Mamta Singla博士、Yu Xin (Will) Wang博士 が筆頭著者
関節軟骨の劇的な再生
- 関節痛・腫れ に苦しむ高齢者は世界中で多数存在
- これまで 軟骨損失の原因に直接作用する薬剤は存在しなかった
- Gerozyme阻害剤 は従来薬や介入法を超える 劇的な再生効果 を示す
- 人体の主な軟骨は 弾性軟骨・線維軟骨・硝子軟骨(Hyaline cartilage)
- 硝子軟骨 は関節に多く、 変形性関節症で最も損傷しやすい部位
軟骨が再生しにくい理由
- 老化・外傷・肥満 で関節に負荷→Chondrocyteが炎症分子・コラーゲン分解酵素を放出
- コラーゲン減少で軟骨が薄く・柔らかく変性
- 炎症が腫れ・痛み を引き起こす
- 硝子軟骨自体の 再生能力は極めて限定的
- 骨内には軟骨形成能のある細胞が存在するが、 関節軟骨内では未確認
老化・プロスタグランジン・修復の関連
- Blau研究室では プロスタグランジンE2 が筋肉幹細胞機能に必須と解明
- 15-PGDH はプロスタグランジンE2を分解
- 15-PGDH阻害やE2増加 で筋肉・神経・骨・消化管・肝臓・血液細胞の修復を促進
- 膝軟骨の15-PGDH量は 加齢で2倍に増加
高齢マウス膝での軟骨再生
- 15-PGDH阻害剤 を腹腔または膝関節内に投与
- 加齢で薄くなった軟骨 が関節全体で厚く再生
- 再生組織は 機能的な硝子軟骨 であることを確認
- 劇的な再生効果を研究者も驚嘆
ACL損傷後の関節保護
- ACL損傷モデルマウス でも同様の再生・保護効果
- 4週間の治療で 変形性関節症の発症率が大幅低減
- コントロール群は15-PGDHが2倍、全例で関節症発症
- 治療群は 運動機能も良好に回復
幹細胞を使わない軟骨細胞の再プログラム
- 高齢マウスのChondrocyteは 炎症・骨化遺伝子が増加、軟骨形成遺伝子が減少
- 治療でこれらの発現パターンが若返り
- 15-PGDH産生細胞集団 が8%→3%に減少
- 硝子軟骨関連遺伝子発現細胞 が22%→42%に増加
- 幹細胞や前駆細胞を介さず、既存細胞の遺伝子発現を若返らせる
ヒト軟骨サンプルでの証拠
- 変形性関節症患者の膝軟骨 でも1週間の治療で
- 15-PGDH産生細胞の減少
- 軟骨分解・線維軟骨遺伝子発現の低下
- 硝子軟骨再生の初期兆候を確認
- 既存細胞の遺伝子発現を変化させるという新たな再生機構
今後の展望と臨床応用
- 15-PGDH阻害剤の筋力低下治療用フェーズ1試験 で安全性・有効性を確認済み
- 軟骨再生を目的としたヒト臨床試験 の開始を目指す
- 成功すれば 関節置換手術の回避やQOL向上 に直結
- Stanford大学・Epirium Bio・Myoforte などとの産学連携・特許出願も進行中
- 研究は NIH・各種財団・企業フェローシップ の支援で実施