概要
- VALORANT のGameplay Integrityチームによるサーバーパフォーマンス最適化の技術的解説
- サーバーフレーム処理時間を 50msから2ms未満 まで短縮した取り組み
- コード最適化、ハードウェア調整、OSチューニングの詳細
- パフォーマンス可視化 とデータ分析による継続的な改善プロセス
- 実運用環境 での負荷試験とCPUアーキテクチャへの対応事例
VALORANTサーバーパフォーマンス最適化の舞台裏
- Gameplay Integrityチーム のBrent “Brentmeister” Randallによる技術的解説
- チームの主な担当領域
- ビルドシステム 管理
- 自動化フレームワーク 運用
- ゲームクライアント・サーバーパフォーマンス 最適化
- 本記事では サーバーパフォーマンス に焦点
サーバーパフォーマンスの重要性
- VALORANT は早期開発段階から非常に厳格な サーバーパフォーマンス要件 を設定
- オンラインシューター特有の ピーカーズアドバンテージ (先に覗いた側が有利になる現象)対策
- 128-tickサーバー の必要性
- 高い反応性と公正なゲーム体験の実現
- ネットワーク遅延・サーバーtick rateの影響を最小化
コード最適化とリソース制約
- 128-tick 運用には 1フレームあたり7.8125ms 以内で処理完了が必須
- 単一ゲームでCPUコアを専有するのはコスト的に非現実的
- 3ゲーム/コア (gpc)以上の効率化が必要
- 36コアホストでは 108ゲーム同時稼働 が目標
- OSやスケジューリングのオーバーヘッドも考慮し 2.34ms/フレーム が目標値
- 初期値 50ms からの大幅な短縮が必要
問題分解と計測システム
- 大規模課題は カテゴリごと に分解して最適化
- 主なCPUコストカテゴリ
- replication
- FoW
- network
- animation
- gameplay
- movement
- equippable
- character physics
- other
- ValSubsystemTelemetry によるコードのスコープ化・細分化
- 各カテゴリごとの 実行時間計測 と分析
Riot Analytics Platformの活用
- Riot内製のAnalytics Platform でビッグデータ分析・可視化
- 平均サーバーフレーム時間
- 各サブシステムの処理時間
- 定期的なパフォーマンス監視により 問題の早期発見・修正
- パフォーマンスデータに基づく エンジニア割り当てとタスク管理
サブシステムごとのパフォーマンス予算管理
- 各サブシステムに 目標値(予算) を設定
- 専門チームごとに 最適化タスク を並行実施
- replication と animation の最適化事例が代表的
Replication最適化
- Unreal Engine 4(UE4) のreplication機能は便利だが パフォーマンスコスト高
- 毎フレーム全変数を全クライアントと比較するため キャッシュ効率が悪い
- RPC(Remote Procedure Call) への置き換え
- 状態変化時のみ通信する pushモデル で大幅な効率化
- 設計・実装時の考慮点増加も、 100倍~10000倍の高速化 を実現
Animation最適化
- サーバー側でも アニメーション計算 が必須(被弾判定のため)
- 履歴バッファ を用いた巻き戻し判定方式
- 毎フレーム計算から 4フレームに1回のみ計算 へ変更
- 必要時は 補間(lerp) で対応
- 75%コスト削減 を達成
- バイフェーズ (購入フェーズ)中はアニメーション処理自体を停止
- 33%追加削減 に成功
実運用環境でのパフォーマンス検証
- 負荷試験 を自作し、100+インスタンス同時稼働時の実測
- フレームタイムの増大(例:1.5ms→5.7ms/168インスタンス)の原因分析
- CPUアーキテクチャ の影響
- 各コアの L1/L2キャッシュ は専用、 L3キャッシュ は共有
- インスタンス増加により L3キャッシュ競合 が発生、パフォーマンス低下
Intelとの協業とハードウェア最適化
- Intel Xeon E5 プロセッサの インクルーシブキャッシュ 特性
- L2キャッシュ の内容が L3キャッシュ にも保持される設計
- L3キャッシュの競合・エビクションがL2にも影響しやすい
- Intelクラウドチーム との共同検証でボトルネック特定
- ハードウェア・OS設定の最適化による 大規模同時稼働 の実現
まとめ
- VALORANT サーバーの大規模最適化プロジェクト全体像
- コード、分析基盤、ハードウェアの 多角的アプローチ
- 継続的な計測・改善サイクル による高パフォーマンス維持
- 他タイトルや開発現場 にも応用可能なノウハウ蓄積