概要
- 英語の綴りの複雑さ の背景にある歴史的事情
- g と yogh(ȝ) の由来と役割の違い
- 中世英語 における複数の発音と綴りの混乱
- ノルマン征服 が英語表記に与えた影響
- 現代英語 の綴りの混乱の根源を探る
英語の綴りの複雑さとその起源
- 英語の綴り は、無音字(numb, knee, honour)や、同じ音を複数の綴りで表す(farm, laugh, photo)点で 非常に複雑
- 一つの文字 が複数の発音を持つ(get, gist, mirage)現象
- スペリング・ビー が成立するほど、綴りの不規則性が競技化される文化
- “i before e except after c” のような例外だらけのルール
- 綴りの複雑さ の根本には歴史的な変遷が関与
‘g’と‘yogh(ȝ)’の歴史
- 現代のg はCarolingian minuscule由来の“Carolingian g”で、カール大帝時代の書体から発展
- 古英語時代 は“insular g(ᵹ)”を使用、形状はzと3の中間
- ラテン語表記 ではCarolingian g、 英語表記 ではinsular gを使い分け
- ノルマン征服 (1066年)後、Norman scribesがCarolingian系の書体を持ち込み、英語表記の伝統が変化
- 12世紀 に新たに登場した“yogh(ȝ)”はinsular gの変形で、 y音 や 失われたgh音 を表記
‘ȝ’(yogh)の発音と役割
- yogh(ȝ) は中英語で 2つの異なる音 (y音とgh音)を表記
- y音:youngやyesterdayの頭音
- gh音:スコットランド語のlochやドイツ語のBachに似た、喉の奥で出す音
- 現代英語の“gh”綴り (laugh, cough, night, daughter)は、元々yoghの代用表記
- 中英語 では1つの文字で複数の音を表記する混乱が発生
‘c’と‘g’の二重性と音変化
- 現代英語のcとg も、yogh同様に 2つの音 を持つ
- c:catのk音、cityのs音
- g:goodのg音、gemのj音
- 口蓋化(palatalization) という音変化現象により、後ろ舌音が前舌音に変化
- 前母音(i, e)に隣接することでg音がy音やj音に変化
- 古英語 ではg音の前舌化により、ᵹear(year)、dæᵹ(day)、weᵹ(way)などが成立
ノルマン人と綴りの混乱
- ノルマン人の書記 はフランス語由来の綴り規則を英語に適用
- g はフランス語同様、j音とg音の両方を担うように
- y音やgh音 を表記するため、insular gの子孫であるyogh(ȝ)が再利用された
古英語から中英語への変遷
- Proto-Germanic 時代、g音は現代のg音ではなく、現代のgh音に近い発音
- 語頭 ではg音に硬化、 語中・語末 ではgh音が残存
- 古英語のᵹ は、y音・g音・gh音の 3つの発音 を持つ多機能文字
- ノルマン系書記 はg音をgで、y音やgh音をyoghで表記するようになった
中英語のyogh表記例
- Sir Gawain and the Green Knight の例文で、1文中にyoghがy音とgh音の両方で使われている
- 現代人には判別困難 だが、当時の読者には語彙知識で判断可能
このように、 英語の綴りの複雑さ は、文字体系や音変化、異文化の影響が複雑に絡み合った 歴史的産物 であることが分かる。