概要
- Dan Williams はソーシャルメディア批判が過大評価されていると主張
- 筆者は逆に、ソーシャルメディアの政治的影響は過小評価されていると論じる
- 特にアメリカ政治の「分極化」への影響に焦点
- Williamsの主張の根拠を検討し、疑問点や限界を指摘
- 分極化以外の政治的悪影響や「エリート急進化理論」を提案
ソーシャルメディアと政治的分極化をめぐる論争
- Dan Williams はAsterisk MagazineとSubstackで、ソーシャルメディアの政治・認知的悪影響は過剰評価だと主張
- 筆者はこれに反論し、ソーシャルメディアの悪影響はむしろ過小評価されていると述べる
- 本稿では特に「政治的分極化」の側面に焦点を当て、認知的側面(フェイクニュース等)は一旦脇に置く方針
- Williamsは分極化の主な根拠として以下の4点を挙げる
- 分極化はソーシャルメディア普及以前から進行していた事実
- ソーシャルメディア利用が少ない高齢層(65歳以上)で分極化が最大となっている研究結果
- ソーシャルメディア普及国間で分極化傾向が異なる国際比較データ
- ソーシャルメディア利用と分極化の因果関係を否定する実験研究の存在
Williamsの主張の詳細
- 分極化の上昇は20世紀後半から始まっており、政党再編やメディア規制緩和が要因との説明
- Boxell, Gentzkow, Shapiro (2017)研究では、ネット・SNS利用が最も少ない高齢者層で分極化が最も進んだと報告
- 同著者による国際比較(2024)では、アメリカ以外の多くの国で分極化が減少
- Guessら、Nyhanら、Alcottらによる実験的研究では、SNS利用制限や停止が分極化にほぼ影響しないと結論
「本当にそうか?」という疑問
- 2010年代以降の分極化データは極めて限定的で、主に大統領選挙年の4点しか存在しない現状
- 国際比較データも2010年以降のデータポイントが少なく、社会的文脈やSNS普及率の差異を考慮しないと結論困難
- 分極化傾向の違い自体がSNSの影響を否定する根拠にはならない
- 高齢層の分極化増大についても、SNS利用層からの「スピルオーバー効果」を考慮する必要
- SNS世代の政治的影響が伝統的メディアや政治家を通じて高齢層にも波及する構造
スピルオーバー効果と社会的影響
- SNSは本質的に「社会的」な存在であり、その影響は利用者以外にも広がる
- 例:ケーブルニュースがSNS発の論争(例:Sydney Sweeney広告、TikTokバイラル動画等)を積極的に取り上げ、高齢層に間接的影響
- SNSアカウントを削除しても、周囲の人間がSNSで得た情報や印象を共有する限り完全な遮断は不可能
- SNSが社会的現実の一部を形成し続ける限り、その影響はオフラインにも波及
エリート急進化理論とその他の悪影響
- 分極化指標だけではSNSの政治的悪影響を十分に測れない
- SNSが政治エリートや意見リーダー層の急進化・過激化を促進し、間接的に社会全体の政治環境を変質させる可能性
- この「エリート急進化理論」は従来の分極化論争とは異なる観点を提供
- Williamsの「現状維持派的反論」は、デジタルメディア革命のリスクを過小評価する学問的逆張りの一例
- Donald Trump現象の初期過小評価と同様、デジタル時代のリスク最小化論は再考が必要
結論
- SNSの政治的影響は分極化指標だけで語れない複雑性
- スピルオーバー効果やエリート層の過激化など、多層的な悪影響への警戒が必要
- Williamsの主張は一理あるが、現状の証拠だけでSNSのリスクを過小評価するのは危険
- 今後さらなるデータと多角的な分析が不可欠