概要
- 光の本質 とその歴史的な解釈の変遷を解説
- 電磁気学 と 相対性理論 による光の理解
- 光の発生原理 (白熱・発光・その他)を紹介
- 物質との相互作用 (吸収・散乱・反射・屈折)の抽象化
- 物理ベースのレンダリング への応用の基礎を整理
光とは何か?
- 光 は、私たちが世界を見て、色や質感を識別し、宇宙を暗闇から救う存在
- 古代ギリシャでは、光は宇宙を構成する 四大元素 の一つとされ、目から発せられる「火のビーム」と考えられていた
- Descartes は波動説を、 Newton は粒子説(コーパスキュール説)を提唱し、それぞれが光の一部の性質を説明
- 1920年代に 量子電磁力学(Quantum Electrodynamics) が登場し、光と物質のすべての相互作用を正確に記述
- コンピュータグラフィックスでは 光線光学(Ray Optics) モデルが十分な精度を持つが、科学的好奇心から他のモデルも概観
電磁気学と光
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物質の基本的性質の一つが 電荷 で、正と負の2種類が存在
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同じ種類の電荷は反発し、異なる種類は引き合う( クーロンの法則)
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すべての電荷は 電場 を作り出し、空間中の他の電荷に力を及ぼす
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特殊相対性理論 により、運動する電荷が磁場を生み出し、これが 磁気現象 の本質
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Maxwell方程式 により、電場と磁場の相互作用を体系的に記述
- 第三式(ファラデーの法則):磁場の変化が電流を誘起
- 第四式(アンペールの法則):電流が磁場を生成
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これらの法則により、 電磁波 (光を含む)が媒質なしで空間を伝播可能
電磁波としての光
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電磁波 は、電場と磁場の振動が同期して伝わる波動
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振幅が大きいほど「明るさ」や強度が増し、量子的には フォトン数 が多い
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周波数 が高いほど、フォトン1つあたりのエネルギーが大きい
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可視光 は波長400~700nmの範囲で人間に見える
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他の波長(紫外線、赤外線、X線、ガンマ線など)は様々な用途や自然現象に利用
- 例:ミツバチは紫外線を見分けて花を識別
- ガンマ線は非常に高エネルギーで危険、宇宙や核反応で発生
光の発生原理
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日常で最も多い光の発生は 白熱(Incandescence) と 発光(Electroluminescence)
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白熱 :物質が高温になることで光を放射
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白熱電球はタングステンフィラメントを加熱し発光(ジュール熱)
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太陽は核融合で生じたエネルギーを放射
- 太陽からの放射の約49%が赤外線、43%が可視光、8%が紫外線
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発光ダイオード(LED) は エレクトロルミネセンス 現象による
- 半導体の p型 と n型 の接合部で電流が流れると、電子とホールが再結合し光子を放出
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その他、 蛍光 や 生物発光 (例:ホタル)など多様な発光現象が存在
光と物質の相互作用
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光子が物質に当たると、 吸収 または 散乱 のいずれかが起こる
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電子は 原子軌道 に存在し、高いエネルギーの光子が吸収されると高い軌道へ遷移
- 吸収後、電子は低い軌道に戻り、エネルギーを熱として放出
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吸収されなかった場合、光の電場が電子を振動させ、 二次波 が発生し複雑な干渉が起こる
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実用上は以下の仮定を置き、モデルを単純化
- 材料は 均質 (どこでも同じ性質)
- 表面は 完全に滑らか
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Maxwell方程式 から、理想的な平面では入射光が 反射 と 屈折 に分かれる
- 反射の法則 :入射角=反射角
- 屈折の法則(スネルの法則) :屈折率により屈折角が決定
- 屈折率が特定の条件で臨界角を超えると 全反射 が発生
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反射・屈折の割合は Fresnel方程式 で計算
- リアルタイム計算には Schlick近似 が用いられる
次章へのつながり
- ここまでの物理現象の抽象化をもとに、 物理ベースレンダリング の基礎的な計算モデルへ発展予定