概要
線形代数 の基礎概念を、初心者向けに簡潔に解説。 スカラー と ベクトル の違いを明確化。 ベクトルの演算 (加算・スカラー倍・線形結合)を説明。 ドット積・ノルム・角度 により幾何学的性質を導入。 直交性 の重要性と応用例を紹介。
線形代数の小さな本:第1章 ベクトル
1.1 スカラーとベクトル
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スカラー :単一の数値量、主に 実数 $\mathbb{R}$から選ばれる。
- 算術の基本単位、加減乗除が可能。
- 線形代数では 係数・スケーリング因子・ベクトルや行列の成分 として機能。
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ベクトル :スカラーを順序付きで並べた集合。
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$\mathbb{R}^n$ はn次元実数ベクトル空間、各成分が実数。
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次元 $n$はベクトル空間の大きさを示す。
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例:
- $(3, -1) \in \mathbb{R}^2$:2次元ベクトル
- $(2, 0, 5) \in \mathbb{R}^3$:3次元ベクトル
- $(7) \in \mathbb{R}^1$:スカラーと同等
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列ベクトル :通常は縦に並べて表記。
- 例:$\mathbf{v} = \begin{bmatrix} 2 \ 0 \ 5 \end{bmatrix} \in \mathbb{R}^3$
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幾何学的解釈 :
- $\mathbb{R}^2$では 原点から点$(x_1, x_2)$への矢印 として可視化。
- $\mathbb{R}^3$では3次元空間で同様。
- 高次元では直接描けないが、 演算規則は同一。
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ベクトルの見方 (3つ):
- 空間上の点としての座標
- 向きと長さを持つ矢印
- 抽象的なベクトル空間の要素
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記法 :
- 太字小文字($\mathbf{v}, \mathbf{w}, \mathbf{x}$)
- $i$番目の成分は$v_i$($i$は1から開始)
- $n$次元ベクトル全体は$\mathbb{R}^n$
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なぜここから始めるか :
- スカラーとベクトル が線形代数の原子。
- これらの理解が、 ベクトル空間・線形変換・行列・固有値 など全ての基礎。
1.2 ベクトルの加算とスカラー倍
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ベクトル加算 :同次元ベクトルの対応成分を足す。
- 例:$\mathbf{u} = (2, -1, 3)$、$\mathbf{v} = (4, 0, -5)$ $\mathbf{u} + \mathbf{v} = (6, -1, -2)$
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幾何学的意味 :
- 平行四辺形則 :二つのベクトルを連結し、その対角線が和ベクトル。
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スカラー倍 :ベクトルをスカラーで伸縮。
- 例:$\mathbf{v} = (3, -2)$、$c = -2$ $c\mathbf{v} = (-6, 4)$
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線形結合 :複数ベクトルにスカラーを掛けて合計。
- 例:$\mathbf{v}_1 = (1,0)$、$\mathbf{v}_2 = (0,1)$ 任意の$(a,b) \in \mathbb{R}^2$は$a\mathbf{v}_1 + b\mathbf{v}_2$で表現可能。
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記法 :
- 加算:$\mathbf{u} + \mathbf{v}$
- スカラー倍:$c\mathbf{v}$
- 線形結合:$c_1\mathbf{v}_1 + \cdots + c_k\mathbf{v}_k$
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重要性 :
- 加算・スカラー倍 がベクトル空間の根幹。
- 幾何学的な移動・拡大縮小、連立方程式の解法の基礎。
1.3 ドット積・ノルム・角度
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ドット積(内積) :二つのベクトルの対応成分を掛けて総和。
- 例:$\mathbf{u} = (2, -1, 3)$、$\mathbf{v} = (4, 0, -2)$ $\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = 2\cdot4 + (-1)\cdot0 + 3\cdot(-2) = 2$
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ノルム(長さ) :ベクトル自身とのドット積の平方根。
- 例:$\mathbf{v} = (3,4)$ $|\mathbf{v}| = \sqrt{3^2 + 4^2} = 5$
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角度 :
- $\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = |\mathbf{u}| |\mathbf{v}| \cos\theta$
- $\cos\theta = \frac{\mathbf{u} \cdot \mathbf{v}}{|\mathbf{u}||\mathbf{v}|}$
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直交性 :ドット積が0のとき、二つのベクトルは直交(垂直)。
- 例:$\mathbf{u} = (1,0)$、$\mathbf{v} = (0,1)$ $\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = 0$ → 直交
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記法 :
- ドット積:$\mathbf{u} \cdot \mathbf{v}$
- ノルム:$|\mathbf{v}|$
- 直交:$\mathbf{u} \perp \mathbf{v}$
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重要性 :
- ドット積により、ベクトル空間に 長さ・角度・垂直性 を付与。
- 直交射影・Gram–Schmidt正規直交化・固有ベクトル・最小二乗法 の基礎。
1.4 直交性
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定義 :$\mathbf{u}, \mathbf{v} \in \mathbb{R}^n$が$\mathbf{u} \cdot \mathbf{v} = 0$なら直交。
- 角度は$90^\circ$($\pi/2$ラジアン)
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例 :$(1,2)$と$(2,-1)$は直交 $(1,2)\cdot(2,-1)=1\cdot2+2\cdot(-1)=0$
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直交集合 :全ての異なるペアが直交するベクトル集合。
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各ベクトルのノルムが1なら 正規直交集合(orthonormal set)
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例:$\mathbb{R}^3$の標準基底
- $\mathbf{e}_1 = (1,0,0)$
- $\mathbf{e}_2 = (0,1,0)$
- $\mathbf{e}_3 = (0,0,1)$
- 各ベクトルの長さは1、相互のドット積は0
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応用 :
- ベクトルの 分解・射影・特別な基底の構築 に活用
- 幾何学的直感を高次元空間にも拡張可能
この章では、 線形代数の基礎 となるベクトルの性質・演算・幾何学的意味を網羅的に解説。 今後の学習のための 土台形成 を目的とする内容。