概要
- DSM-5-TR のパネル・タスクフォースメンバーの 金銭的利益相反 を調査した研究
- 60%以上の該当医師が 業界から報酬 を受領
- 総額は 1,420万ドル超、主に研究費やコンサルティング料
- 利益相反の存在が 診断基準や治療ガイドライン の信頼性に影響
- 今後は 独立性の高い基準 策定が必要
DSM-5-TRにおける未公開の金銭的利益相反:横断的分析
- 目的 :American Psychiatric AssociationのDSM-5-TR(2022年発行)パネル・タスクフォースメンバーの業界との金銭的関係の実態と種類を評価
- 調査対象 :2016-2019年に米国内で活動し、Open Paymentsデータベースに記録された92名の医師(パネル86名、タスクフォース6名)
- 方法 :Open Paymentsデータベースを用い、各医師の氏名・専門・所在地で本人確認。LinkedIn検索も併用
- 主な評価項目 :2016-2019年の間に受けた報酬の種類および金額
- 結果 :
- 92名中55名(60%)が業界から報酬受領
- 報酬総額は 1,420万ドル (約11.2億円、1,300万ユーロ)
- タスクフォースメンバーの33.3%も報酬受領
- 最も多い報酬は「飲食」(90.9%、約8.9万ドル)、次いで「出張」(69.1%、約68万ドル)、「コンサルティング」(69.1%、約117万ドル)
- 報酬の大半(71%)は「研究費」名目
- 5つのパネルでは75%以上、1つのパネルでは全員が業界から報酬受領
利益相反の背景と影響
- DSM は精神疾患診断の「バイブル」とされ、 新薬承認や保険適用、治療方針に多大な影響
- 業界との金銭的関係は 研究の中立性や信頼性低下、 公衆の信頼失墜 のリスク
- 過去のDSM-IV-TRやDSM-5でも 同様の利益相反 が指摘されてきた
- APAは開示ポリシーを導入しているが、十分な透明性確保には至らず
研究方法の詳細
- Physician Payments Sunshine Act により、製薬・医療機器会社は医師への支払いを公開義務
- Open Paymentsデータベースにより、報酬の種類(一般、研究、所有権等)を確認
- DSM-5-TRの執筆開始年(2019年)とその3年前までを調査期間に設定
- 医師資格や米国内居住の確認、重複排除、LinkedInによる追加確認
- Open Payments未掲載者は「報酬なし」と判定
- データの最終確認日は2023年3月2日
課題と今後の提言
- 会議議事録や提案内容の透明性 が不足
- 利益相反が判断や診断基準の改定に どの程度影響したかは不明
- 患者や公衆の直接的関与は無し だが、経験者の意見が研究の焦点に影響
- DSM-5-TRパネル・タスクフォースの 利益相反規制の強化 が必要
- 独立した専門家の起用推進
- 利益相反のある専門家は助言のみ、 意思決定権を持たせない 運用
- 診断基準や治療指針の 客観性・中立性維持 への配慮
まとめ
- DSM-5-TR作成メンバーの6割近くが 業界から金銭的利益 を受けていた事実
- この状況は過去のDSM改訂時と変わらず、 利益相反対策の不十分さ を示唆
- 精神医療の信頼性と公共の利益のため、 より厳格な開示・規制 の必要性