概要
Zenobia Pay は、 銀行振込 を活用した新しい決済ネットワークを開発。 FedNow の登場に刺激を受け、既存のカードネットワークの高額手数料に対抗することを目指した。 オープンソース化 の決断は、事業化の壁と失敗経験から。 ターゲット顧客の変遷と、それぞれの課題を詳細に分析。 今後は他の誰かがこのミッションを引き継ぐことを期待。
Zenobia Payをオープンソース化する理由
- Teddy と共に、2023年2月から Zenobia Pay の開発に専念
- Visa や Mastercard などの高額手数料ネットワークへの対抗を目指し、 銀行振込 を用いた決済プラットフォーム構築
- FedNow の即時送金インフラに感銘を受け、QRコード決済(Pix, UPI, AliPay型)の米国展開を志向
- 即時決済・モバイルファースト・Pay-by-bankネットワーク の実現
- しかし、 利用者は犯罪者や詐欺師 ばかりで、正規ユーザーの獲得に失敗
- 営業活動・知人紹介・直接訪問 など尽力も、数ヶ月間成長ゼロ、2万ドルの詐欺被害
- 年齢や人脈不足 により事業推進が困難と判断し、オープンソース化を決定
- コード公開 により、同じ志を持つ他者の時間短縮を願う
- 決済事業はコードだけでなく、銀行パートナーが必須
- Orum.ioのSaaSを利用していたが、Stripeによる買収でサービス終了
- Trice や Column など他の銀行プロバイダーへの移行が必要
- GitHubリポジトリ公開
- https://github.com/zenobia-pay/ios
- https://github.com/zenobia-pay/zenobia-pay
- https://github.com/zenobia-pay/core
ターゲット顧客の変遷と課題
Iteration 1: 小規模事業者(SMB)
- 低マージン事業者 向けに、手数料削減による利益向上を提案
- 課題1: POS連携
- 店舗販売にはPOSシステムとの統合が必須、導入期間が大幅に延長
- 過去の同様事例(Kash)の失敗要因
- 課題2: サポート負担
- SMBはサポート需要が高いが、手数料収入は少額(月30ドル程度)
- 課題3: 導入消極性
- 表向きは興味を示すが、実際には顧客体験の変化を嫌い導入せず
- 表明された意向と実際の行動の乖離
Iteration 2: 高額商品+不正保険
- 高額商品販売業者 向けに、カード不正・チャージバックリスク軽減を訴求
- Riskified や Signified のような不正保険とのバンドル提案
- 銀行口座情報の盗難リスクは低い ことから、保険を付加価値化
- 課題1: ACHリスクと規制
- FedNowはプッシュ型のみで、APIによる資金引き出し不可
- ACHリスクモデル構築が必要(Plaid Signalなどのリスク分析サービス利用)
- 高額商品では60日間のリターンリスクを負う必要
- 課題2: 商業者の関心薄
- 実際には導入に消極的
- 課題3: チェックアウト時のコンバージョン
- 新しい「Pay with」ボタンは、クレジットカードのリワードに劣る
- 手数料還元を提案するも、クレカ報酬の下位互換
Iteration 3: ラグジュアリー証明+リセール
- 購入証明 を活用し、ラグジュアリー商品のリセール市場で新たな価値創出を目指す
- 39億ドル規模・急成長中 のリセール市場で、ブランドに新収益源を提案
- 既存売上のコスト削減ではなく、新たな収益獲得 を訴求
- 顧客体験の新規軸 (Buy-to-resell、Buy-it-for-life、Buy-to-flex)を創出
- 課題: 欧州市場での参入障壁
- ラグジュアリーブランドはブランド体験を重視し、外部者への警戒感が強い
- カリフォルニアとは異なり、冷淡な反応
- 市場参入に数年単位の時間が必要と判断
今後への提言
- ジュエリーやIteration 2は撤退
- 不正業者(ロシア系マフィア等)によるACH詐欺被害で損失
- Iteration 3に集中し、ラグジュアリー市場の人脈がある場合のみ推進
- 決済体験の垂直統合 (カードネットワーク+カードプロセッサの一体運営)
- CPGやラグジュアリーブランドのような運営方針
- 決済後体験の重視
- 現状、営業力と製品開発のギャップを痛感し、決済事業から撤退
- 決済・スタートアップの知見を得て、多くの学びと楽しさを実感
- 失敗はしたが、次の挑戦者への道標となることを願う