概要
- Ivan Illichによる「Silence is a Commons」の要旨
- コンピュータと電子機器が人間のコミュニケーションや環境に与える影響
- コモンズ(共同体の共有資源)とリソース(経済的資源)の違いの重要性
- 近代化と囲い込み(enclosure)が人間性や自治に及ぼす悪影響
- 電子的管理社会への警鐘と新たな政治的エコロジーの必要性
沈黙はコモンズである ― Ivan Illich
- コンピュータ と電子機器は、 コミュニケーション において、かつての 囲い込み (fences)や自動車による道路の変化と同じ現象を引き起こしている現代社会
- 機械が人間の生活のあらゆる面に侵入し、 人間を機械的な行動 に従わせる傾向
- 電子的な管理社会では、 人間の尊厳や幸福感 が損なわれ、無気力・無力・自己中心的・非政治的な人間像の増加
- 政治的プロセスの崩壊 と「管理されること」を望む人々の増加
- 日本が「電子機器の首都」として、 自己制限の新たな政治モデル を世界に示す意義
コモンズとリソースの区別
- 「コモンズ(commons)」は、 共同体が伝統的に共有し、生活の糧を得てきた環境 を指す言葉
- コモンズは、 生産のための資源 (resource)とは異なり、 経済的に希少とみなされていなかった 環境の一部
- 慣習法 によって守られ、明文化されていない複雑な権利体系
- 例:森の木陰は羊飼い、ドングリは農民の豚、枯れ枝は村の未亡人、枝は教会の装飾、木の下は村会議の場
- 近代化とともに、 コモンズが商品生産のリソース へと変質し、 囲い込み(enclosure) による貧困の発生と共同体の再定義
囲い込みの社会的・生態学的影響
- 囲い込みは、 環境の管理権を少数者に移転 しただけでなく、 社会の環境観そのものを変革
- かつては多くの人々が市場を介さず生活の糧を得ていたが、囲い込み以降は 商品化されたリソース への依存が進行
- 例:メキシコシティの旧市街の道路はコモンズであり、人々が自由に活動・交流していた
- 新市街では道路が 車両のためのリソース となり、人の自由な移動や交流が制限
- 環境のコモンズからリソースへの変質が 政治経済の盲点 であり、これまで十分な批判がなされてこなかった
近代政治とコモンズの喪失
- 近代の政治運動は、 リソースの私的利用 に異議を唱えてきたが、 コモンズの概念自体 は顧みられてこなかった
- そのため、 コモンズ→リソースへの変質 が正当化され、消費者としての人間像が定着
- 市民運動の多くは、本質的に コモンズの喪失への反発 であり、共同体の再生を目指すもの
電子的管理社会への警鐘
- 電子機器によるコモンズの囲い込み が、過去の草地や道路の囲い込みよりも広範かつ深刻な脅威
- 人間の自由なコミュニケーションや自治能力 が、電子的な管理・制御によって制限されつつある現状
- 新たな 政治的エコロジー の枠組みの必要性
- 技術的変化を 専門家だけでなく市民の政治的コントロール下 に置く重要性
歴史的回想と現代への示唆
- 著者自身の家族史を通じて、 伝統的な生活とコモンズの持続性 を強調
- 近代の政治・経済変化が、 日常生活や共同体の基盤 をいかに変容させたかを提示
- 電子化社会におけるコモンズの再発見と保護 の必要性